ほとけの履歴書 薮内佐斗司
近鉄奈良駅の改札を出ると、頭にシカの角をつけた童子「せんとくん」が目に留まります。奈良県のマスコットキャラクターとして認知度も高まりましたね。
「せんとくん」を手掛けた彫刻家・薮内佐斗司氏が著した「ほとけの履歴書」は、仏像の彫刻技法などイラストを交えて丁寧にわかりやすく書かれています。
奈良を訪れる前に一読しておくと今まで気づくことのなかった仏像のあれこれを知ることができ、「東大寺の金剛力士立像」や「興福寺 阿修羅立像」「薬師寺 薬師三尊像」「唐招提寺 鑑真和上座像」など興味深く回ることができそうです。
日本に現存する最古の仏像と言われる飛鳥寺の「釈迦如来坐像」。飛鳥大仏とも呼ばれていますが、像高は2m75cmになります。
奈良にある大仏(像高約15m)と比べると小さくみえてしまいますが、飛鳥大仏の作られた時代というのは、鋳造技術の制約もあって、金銅仏のほとんどが30~40cm。当時からするととんでもない大きさだったわけで、”飛鳥大仏”と呼ばれるようになりました。
創建当時の飛鳥寺は、塔を中心にして東西北に金堂を配する大伽藍だったにもかかわらず、完成後にはお堂に安置する仏像がありませんでした。
著書・ほとけの履歴書には、
「なぜ仏像不在だったのか」
薮内氏の見解も交えて解説されています。
読み進めていくと、何度か訪れている飛鳥(明日香)にも、また訪れたくなりました。
小難しい印象の仏像書籍が多いなか、薮内氏が、仏像作者の思いを想像し代弁するところなどは、彫刻家らしい視点を感じさせてくれます。
唐招提寺に安置されている「鑑真和上像」は、弟子僧だった忍基(にんき)が、心を込めて、思いを込めて作ったからこそ生まれた像の迫力、美しさがあり、プロの彫刻家が異能のほどをつぎ込んだ像の類とは別の種類の思いが胸に迫ってくるとありました。
高い彫刻技術を持つ人が心を込めて「理屈抜きに慕う存在」の像を彫ったとき、たしかに見る人を圧倒する美しさが表出するような感じがします。
今回紹介した「ほとけの履歴書」を読んでいると彫刻家・薮内佐斗司氏の作品展にも足を運びたくなりましたが、タイミングよく開催されておらず、作品写真が多く掲載されている薮内佐斗司「開運 楽観道のすすめ」を読んでみました。これも面白かったので、別の機会に紹介したいと思います。
今回紹介した薮内佐斗司氏の著書 ・ ほとけの履歴書 奈良の仏像と日本のこころ ・ 開運 楽観道のすすめ |
【本のタイトル】ほとけの履歴書
【著者】薮内佐斗司
【出版社】NHK出版
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