高山寺(こうざんじ、こうさんじ)は、京都市右京区梅ヶ畑栂尾町の山中にある寺院。
紅葉でも人気の高い神護寺も近く、「鳥獣人物戯画」はじめ多くの文化財を所有する寺院として知られ、「古都京都の文化財」として世界遺産に登録されています。
高山寺は、山奥にひっそりと佇む静かなお寺さんで、境内の樹木、石垣、植物が見事に調和して拝観者さんをやさしく導いてくれています。
もくじ
世界遺産 高山寺の住所、拝観時間、拝観料、駐車場、アクセスなど
【訪問地】高山寺 【所在地】京都市右京区梅ヶ畑栂尾町8 【電話】075-861-7204 【公式HP】https://kosanji.com/ 【拝観時間】8:30~17:00 【拝観料】自由参拝 ※秋期入山料500円(石水院800円) 【駐車場】栂ノ尾バス停近くに市営駐車場50台(無料)※11月のみ有料 【アクセス】車ナビに「075-861-7204」とご入力ください |
世界遺産 高山寺 アクセスマップ
高山寺が世界遺産に登録された理由
世界遺産に登録されるには登録基準というものがあり、定められた基準がひとつだけで適用されることもあります。世界遺産の多くは、複数の基準が適用されていることが多いようです。
世界遺産/顕著な普遍的価値を証明する10の登録基準 |
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1.人の手によって作られた素晴らしい傑作であること 2.国や地域間で文化交流が行われてきたことを示す遺産 3.文明や特徴的な時代が存在していたことを証明する唯一または稀な遺構 4.建築技術や科学技術の発展に寄与した遺産 5.国または地域を代表する伝統的集落、または陸上ないし海上利用の際立っているもの 6.歴史上の重要な出来事や伝統、思想、信仰、芸術などに関係した遺産 7.美しい自然景観や独特な自然現象が見られる遺産 8.地球の歴史を伝える遺産 9.環境に合った動植物の進化の過程や固有の生態系を示す遺産 10.絶滅危惧種が生息する地域や生物多様性を示す遺産 |
高山寺は、僧として名高い明恵上人が開基であり、国宝の「石水院」「鳥獣人物戯画」をはじめ、絵画、文書などを多く所蔵していることから世界遺産に登録されました。登録基準の1番、2番、3番、4番、6番などが該当しているものと思われます。
国宝 | 詳細・備考 |
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石水院 | |
紙本墨画鳥獣人物戯画 4巻 | 甲乙丙丁の4巻からなる絵巻。 |
紙本著色華厳宗祖師絵伝 7巻 | 新羅の華厳宗の祖とされる義湘と元暁の伝記絵巻 |
紙本著色明恵上人像 | 例の祖師像と異なり、明恵の姿は山中の自然景の中に小さく 表現されている |
絹本著色仏眼仏母像(絵画) | 明恵の念持仏であり、図中には明恵自身による書き込みがある |
玉篇巻第廿七(前半) | 中国梁代成立の漢字辞書「玉篇」の、唐時代の写本 中国では早くに失われて日本にしか残っていない点で貴重 |
篆隷万象名義 6冊 | 空海の編纂とされる漢字辞書の唯一の古写本として貴重 |
冥報記(めいほうき)3巻 | 唐代成立の仏教説話集の写本 |
高山寺は、774年に創建された後、神護寺の別院となっていましたが、1206年に後鳥羽上皇が頼り(帰依)にしていた明恵上人(みょうえしょうにん)に栂尾(とがのお)の寺域を与え、高山寺として再興しています。
明恵上人(みょうえしょうにん)
9歳のときに両親を失った薬師丸(明恵上人の幼名)は、翌年に神護寺にいる叔父に師事し、1188年に出家し、東大寺で具足戒を受けています。
幼い頃は今でいうイケメンで、4才のときに父親に宮中(大臣に仕える)へ入れられそうになりました。幼くしてすでにお坊さんになることを決めていた薬師丸(明恵上人の幼名)は、宮中に行かなくても良い理由を作ろうと「醜くなればいい」と考え、自分の身体(顔)にキズをつけることを思案します。
当初は、焼き火箸で顔を焼こうと思っていたのですが、コワくなって腕に火箸を押し当ててみたところ、あまりの熱さに耐えられなくなり、大泣きしてしまいます。さすがに顔への ” 焼き ” は諦めたそうです。
■具足戒(ぐそくかい)とは 仏教で出家した修行者が守るべき戒のことで、具戒、進具戒、大戒とも言われます。当時、出家者の集団(僧伽)に入るためには、この具足戒を受ける必要がありました。 現在、日本ではほとんど行われていませんが、スリランカ、ミャンマー、タイなどでは現在も儀式があります。 |
明恵上人の耳切り事件
焼き火箸の件から9年が経ち、仏道修行において13才のときにはお釈迦様の故事にならい ” 捨身 ” を試みようとします。
” 捨身 ”というのは、仏様を供養するために、自分の命を断つことです。
少年・薬師丸(明恵上人の幼名)がとった行動は、野犬がたむろする暗い墓地に横たわることでした。私が小学生の頃も野良犬をよく見かけましたが、当時は飢えた野犬がたくさんいたのです。
そこに横たわり、野犬に自分の肉を食べさせることで ” 捨身 ” を試みたのです。ところが野犬は薬師丸少年の肉を食べることなく、時間だけが過ぎていき終えることになりました。2度も同じことをしたと記録されています。
後年、この ” 捨身 ” に関しては、「若気の至り」であったと述べられてます。幼い頃よりお坊さんになることを決心していたような方が、命を断つ選択をしてしまうコワさというか宗教の難しさを感じてしまう一面ですね。
幼い頃から仏道修行をし、ある意味、正しい道に導かれたのかなぁと思うことができますが、自爆テロのような犯罪には、幼い子供を洗脳(教育)して犯行に至るという話もよく耳にします。幼い頃の教育、導きというのは本当に大切なことだなぁと改めて思いました。
そして明恵上人26才、
仏眼仏母像の前で、自分の右耳を切ってしまいます。
常日頃より明恵上人は、お釈迦様より直接教えを受けられなかったことを残念に思っていました。同じ道を行く周りの僧たちは、きらびやかな僧衣を身にまとっては世俗の生活を楽しんでいるようにしか見えず、そんな彼らに対して怒りさえも生まれていたのです
剃髪や僧衣を着る意味が薄れているのであれば、自分の姿を変え、俗世間から距離を置いて仏の教えを求めていこうと自分の道を再確認。23才で俗縁を絶って白上山にて約3年間修業をかさねます。
この修行時に「人間を辞して少しでも如来の跡を踏まん」と思い、自ら耳を切り落としています。
耳を切る前は、
目をつぶす、鼻をそぐ、手を無くすなどいろいろと考えを巡らしていました。目をつぶしてはお経が読めず、鼻をそいだら鼻水が経に垂れ、手を無くせば印を結べなくなることから、耳を切ることにしたとあります。
明恵上人の仏道にまい進する覚悟は、その後も続き、修行と学問の生活を送ります。明恵は、仏陀の説いた戒律を重んじることが、その精神を受け継ぐものとなり、生涯にわたって戒律の護持と普及を誓い、そして実践してきた人でした。
インドには仏教の戒律を守る人を意味する「比丘(びく)」という言葉があるのですが、それは涅槃(悟りの知恵を完成した境地)に達することを目的としたもので厳粛な意味が含まれています。
その「比丘(びく)」の資格を満たす僧は、日本仏教界では明恵上人ぐらいとも言われ、多くの人から尊崇(そんすう)を集めた僧でした。
国宝の石水院(せきすいいん)
国宝の石水院(せきすいいん)。
石水院は国宝建造物で、創建以来、何度も移築と改造をくり返し、1889年(明治22年)に現在の地に移されました。高山寺の建造物で創建当時から残る建物は「石水院」のみとなります。
創建当時は「経蔵(経典や仏教に関する書物を収蔵しておく建物)」として建てられており、寝殿造の住居に改築されたものです。室内からみる石燈籠、石畳み、苔や樹木の配置もすばらしく、いつまでも眺めていたいお庭です。紅葉の季節に改めて足を運んでみたいと思います。
石水院(国宝)では、絵巻や像などを直接撮影することは禁じられていますが、建物の中から外(庭)に向けて撮影するのは良いとのことでした。(2021年6月現在)
板間に置かれた「善財童子(ぜんざいどうじ)」。
※善財童子(ぜんざいどうじ)・・・仏教の童子(子ども)
木を一枚一枚重ねて厚みを増し、屋根のカーブが造られています。
石水院の客殿南側と北側との間に中庭があるのですが、青モミジの枝先でモリアオガエルが産卵をしてました。
白い泡は、卵塊です。孵化したオタマジャクシは、そのまま下の池に落ちて泳ぎだします。夜行性なので、日中にカエルの姿が見れたのはラッキーでした。4月~7月に訪れる方は、ぜひ探してみてください ♪
高山寺 遺香庵(いこうあん)
日本で初めて茶を植えたと言われるお寺ですが、明恵上人が高山寺を再興した頃は、遺香庵(茶室)はありませんでした。
その後、茶道に熱心な方たちが集まり「茶室」を寄進することになりました。高山寺の中興の祖でもある明恵上人をたたえるため、700年遠忌に因んで「遺香庵(茶室)」が建てられました。
日本最古之茶園の碑 高山寺
鎌倉時代初期に明恵上人が栄西禅師から贈られた茶種を植えた所で、ここから全国に茶が普及したと言われています。いまでも5月になると茶摘みが行われています。
高山寺 世界遺産 開山堂
開山堂には、等身の明恵上人像が安置されています。
※開山堂(かいざんどう)・・・仏教寺院において最初に住した僧を祀った堂のこと。 |
明恵上人御廟(お墓) / 高山寺
開山堂の上に「明恵上人御廟(ごびょう)」があります。
写真中央左の石碑には、明恵上人の遺訓「阿留辺幾夜宇和(あるべきようわ)」と記されています。漢字で記された「阿留辺幾夜宇和」は、当て字で特に意味はないそうです。
「あるべきようわ」は、戒も律も守らないで、俗人以上に俗な生活を送っている僧侶たちに対して述べた厳しい批判コメントで、自身の立場に応じて規範規律を守り、その立場に応じて為すべきことを成せと諭しているのです。
高山寺 世界遺産 金堂
2018年9月の台風で境内の杉や檜(ひのき)が300本以上が倒れ、金堂の他にも開山堂や石築地なども被害を受けました。半壊状態となった金堂も無事復旧を果たしました。
閼伽井(あかい)
仏前に供える閼伽(あか)の水をくむための井戸。現在も水が湧き出ていて、金堂のお供え用の仏花のお水などに使われています。
※閼伽(あか)・・・サンスクリット語の「argha」の音訳で ” 価値あるもの ” という意味があります。仏教では、神に供える捧げもので「聖水」になります |
自然豊かな緑に覆われた境内。できるだけ手を入れず自然のままの美しさを大切にしているそうです。2018年の台風の影響で大木が多く倒れた影響もあり、一部エリアの樹木は失われてしまいましたが、明るい光が足元を照らすようになりました。
高山寺の表参道と裏参道
高山寺には表参道と裏参道があります。市営の高雄観光駐車場が近いのは「高山寺裏参道」です。
裏参道に近い「市営 高雄観光駐車場」。
トイレもありますので、休憩にも便利です。
徒歩圏内の「神護寺」「西明寺」が色づくタイミングと若干異なるのですが、また紅葉の季節に訪れてみようと思います。
■高山寺周辺の観光地 「神護寺」「西明寺」「嵐山フィッシングエリア」など |
■京都の世界遺産 「上賀茂神社」「下鴨神社」「金閣寺」「龍安寺」「仁和寺」「銀閣寺」「延暦寺」「高山寺」「東寺」「西本願寺」「二条城」「清水寺」「西芳寺」「天龍寺」「醍醐寺」「平等院鳳凰堂」「宇治上神社」 ※順不同 |
■奈良の世界遺産 「東大寺」「興福寺」「春日大社」「春日山原始林」「元興寺」「平城宮跡」「薬師寺」「唐招提寺」「法隆寺」「法起寺」「吉野・大峰」 ※順不同 |
【訪問地】高山寺
【所在地】京都市右京区梅ヶ畑栂尾町8
【電話】075-861-7204
【公式HP】https://kosanji.com/
【拝観時間】8:30~17:00
【拝観料】自由参拝 ※秋期入山料500円(石水院800円)
【駐車場】栂ノ尾バス停近くに市営駐車場50台(無料)※11月のみ有料
【アクセス】車ナビに「075-861-7204」とご入力ください
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